ふらっと読書録

小説好きのサラリーマンによる読書録。ネタバレ込みで感想を記録します。

スピノザの診察室/夏川草介

 

あらすじ・書籍情報

著者   : 夏川草介
出版   : 水鈴社
初版   : 2023年10月25日
ページ数 : 287

こんな人におすすめ!

  1. 心温まる物語を読みたい人
  2. 2024年の本屋大賞ノミネート作品に興味がある人

登場人物

  • 雄町 哲郎(おまち・てつろう) ・・・原田病院で働く内科医。通称「マチ先生」。
  • 美山 龍之介(みやま・りゅうのすけ)・・・哲郎の甥。中学生。母親を亡くしたため、哲郎が面倒を見ている。
  • 南 茉莉(みなみ・まつり)・・・研修医。研修の一環で原田病院を訪れる。
  • 花垣 辰雄(はながき・たつお)・・・大学准教授。医師としての哲郎を信頼している。

感想

スピノザの面白いところは、人間の努力というものを肯定した点にある。

すべてが決まっているのなら、努力なんて意味がないはずなのに、彼は言うんだ。

"だからこそ"努力が必要だと 

医師として非凡な実力を持ちながら、とある理由で京都の小さな病院に勤めている哲郎と、個性豊かな医師たち。みんな優しくて心が温まる...

人は何のために生まれて、どこへ向かうのか。皆にかならず訪れる「死」の直前に、人は何を思うのだろう。想像すると不安が止まらなくなる。

マチ先生のようなお医者さんに最後に出会えたら、安心して旅立つことができるんだろうな。

願ってもどうにもならないことが、世界には溢れている。

意志や祈りや願いでは、世界は変えられない。

そのことは、絶望なのではなく、希望なのである。

オランダの哲学者・スピノザが残した言葉。

「意志の力だけではどうにもならない」と説く一方、「だからこそ努力すべき」と。

理解できるようで理解しきれない感じがします。

マチ先生やスピノザが真に言いたかったことは何なのか、考え続けたい。