ふらっと読書録

小説好きのサラリーマンによる読書録。ネタバレ込みで感想を記録します。

葉桜の季節に君を想うということ ~華麗なる叙述トリック

 

あらすじ・書籍情報

かつては探偵事務所で働き、いまは「何でもやってやろう屋」を自称して気ままな生活を送る「俺」成瀬将虎。
ある日、高校の後輩のキヨシの頼みで、彼が密かに惚れている久高愛子の祖父の不審死と、高額で布団や健康食品を売りつける蓬莱倶楽部の調査を引き受ける。
そして同日、駅のホームで飛び込み自殺しようとした女・麻宮さくらを助けたことで、運命の歯車が回り始める――。

蓬莱倶楽部の悪徳商法を調査する将虎の軽妙なハードボイルド探偵の活躍を楽しむあなたに、ラストで襲い掛かる大どんでん返し!?

日本推理作家協会賞本格ミステリ大賞ダブル受賞&「このミステリーがすごい!」「本格ミステリベスト10」で第1位!
中居正広さんほか、たくさんの著名人も激賞!
二度読み必至の究極の徹夜本です。

 

著者   : 歌野晶午
出版   : 文春文庫
初版   : 2007年5月10日
ページ数 : 469
 

こんな人におすすめ!

  1. ミステリーが好きな人
  2. 華麗な叙述トリックに騙されたい人

登場人物

  • 成瀬 将虎(なるせ・まさとら) ・・・主人公。元私立探偵。
  • 麻宮 さくら(あさみや・さくら)・・・自殺を図った女性。将虎によって助けられる。
  • 久高 愛子(くだか・あいこ)   ・・・祖父の不審死について将虎に調査を依頼する。
  • 古屋 節子(ふるや・せつこ)   ・・・多額の借金を抱える60代半ばの女性。

感想・まとめ

いわゆる「叙述トリック」(巧みな文章によって物語の中の人物ではなく 読者自身を騙すトリックの事)が使われており、序盤で張り巡らされた伏線が終盤に一気に回収されます。見事に騙されました。

主人公・将虎の視点を中心に描かれており、様々な時間軸で起きた出来事が断片的に語られます。最初は「今どの時代の出来事?」と少し混乱しましたが、読みにくさは感じませんでした。

俺は、麻宮さくらに特段の興味はなかったし、二度と会うこともあるまいと思っていた。

物語は、主人公の将虎が、久高愛子という女性から、愛子の祖父の不審な死について調査を依頼されるところから始まります。愛子の祖父・隆一郎は交通事故によって死亡しましたが、その事故の影には「蓬莱倶楽部」という怪しい組織がちらつきます。
そんな折、将虎は偶然、駅のホームから降りて自殺を試みていた女性、麻宮さくらを救出します。さくらが自殺をしようとしていたことについて、二人は駅員から取り調べを受けますが、将虎の機転によって難を逃れます。
節子はもうどうしようもないほど邪悪の泥沼にはまりこんでいた。
視点が変わり、古屋節子という女性が登場。この人、本当に困ったもので、60代半ばと良い年齢にもかかわらず、お金の使い方に節度がない。
怪しい健康食品や寝具に高額のお金を費やし、多額の借金を抱えてしまいます。離れて暮らす息子に頼ることもできず、借金の返済に苦労します。なんとか借金を返済するため、怪しい仕事を引き受けてしまいます。
節子に高額の健康食品や寝具を売りつけ、さらに怪しい仕事を持ち掛けた組織こそが、「蓬莱倶楽部」だったのです。

頭で考えただけで結論を出してしまうやつは、結局その程度の人間でしかない。

様々な時代で暗躍する「蓬莱倶楽部」を秘密を暴くため、将虎は調査を進めます。久高隆一郎の死の真相、麻宮さくらの謎、「蓬莱倶楽部」の真実。

すべてが明かされるとき、思わず「えっ!?」と声が出てしまうくらい、衝撃の真実が明らかになります。

あなたは自力でその真実にたどり着けるでしょうか?