ふらっと読書録

小説好きのサラリーマンによる読書録。ネタバレ込みで感想を記録します。

「うさぎの町の殺人」あらすじ感想 ~この町、何かがおかしい...

こんにちは、ふらっとです。

今回は周木律さんの小説「うさぎの町の殺人」を紹介します。

 

はっきり言って、この小説、めちゃくちゃ面白かったです。

 

物語は、黒田茂と娘の葵が、自然に囲まれたニュータウン、通称「うさぎが丘」という地域に引っ越してきて、2か月ほどが経ったところから始まります。

この町の正式名称は「三浦半島二子山ピープルタウン」ですが、あちこちで野うさぎが見られることから「うさぎが丘」という呼び方が一般的になっています。

もともと黒田父娘がうさぎが丘に引っ越してきたのは、葵の大学進学が目的でした。うさぎが丘にある「平成理科大学」の受験に合格し、進学とともに父親とともに移り住んだというわけです。

 

入学から2か月ほど、ようやく新生活に馴染んできた葵を見て安心する茂でしたが、ほどなくして父娘の周りで奇妙な出来事が起こり始めます。

茂はいつもの散歩コースで、顔見知り三葛というお巡りさんから、不可解な不可解な事件の話を耳にします。それは、うさぎが丘で「野うさぎの惨殺事件」が相次いで発生しているとのこと。「誰が何のためにそんなことをしているのか?」と茂は不審に思います。

 

また、葵の周りでもおかしな事件が発生します。

葵が大学で入ったサークル、通称「マーダークラブ」。それは、推理小説を読み、そのトリックが再現可能か検証する趣旨のサークルでした。

サークルの先輩とも仲良くなり始めた葵でしたが、ひょんなことから「マーダークラブでは、葵が入る少し前に自殺者が出た」という話を聞きます。

そしてなんと、葵がサークルに入って少し経ったとき、また一人、マーダークラブの先輩が自殺するのです。

 

相次ぐ自殺事件が起こった矢先、葵は何者かによって誘拐されてしまいます。

 

娘が失踪し、焦る父親。茂は、葵の失踪の手がかりを探る中で、うさぎが丘に関するとんでもない秘密を知ることとなります。

 

この小説の面白いところは、なんといっても「テンポの良さ」です。

うさぎが丘に関する小さな謎が浮かび上がり、その謎がとけると、よりスケールの大きい新たな謎が浮かび上がる。そしてその謎が解けると、更にスケールの大きい謎が浮かび上がり、という具合に、茂が謎を明らかにするにつれ、次第に国家を揺るがすような、触れてはいけない領域に足を踏み入れていきます。

一つ一つのクエスチョンに対する答えがポンポンと出てくるため、飽きることがなく、むしろどんどん引き込まれて一気読みしてしまいます。

 

平穏に見える表側に対して、闇に満ちた裏側がある。

秘密を知りすぎた人間や、明かしてはいけない秘密を明かした人間は、隠蔽のために消される...。

長瀬智也主演でかつて実写ドラマ化した漫画『クロコーチ』のような、国家の闇に迫るようなダークな雰囲気の物語が好きな人は特にハマると思います。

物語が終わるとき、読み始めた頃には予想もしていなかった驚愕の真実が、明らかになっていることでしょう。